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2010/08/27(Fri)
『淀君の黒ゆり』『洛中の露』
ミツルギ
『淀君の黒ゆり』口中医桂助事件帖10(和田はつ子/小学館)
シリーズも第十巻になり、登場人物も増えてきました。橋川慶次郎こと一橋慶喜がいい味出してます。
今回は「お歯黒」の効用なども書かれていて、興味深く読むことが出来ました。
というか、そのくらいしか感想が……。面白かったんですが、全体的にトーンが重かったりして。
『洛中の露』(東郷隆/文春文庫)
いつもさくさくと読める面白さがありますね、この作者の歴史物は。マンガなどで流行の古田織部ですが、副題に「金森宗和覚え書」とあるように、主人公を金森宗和に据えてさまざまな茶絡みの話が展開される短編集です。
宗和の身辺を警護する源五衛門がいい味出してます。織田有楽斎もキャラが立ってます。
茶人あるいは茶道の存在は、現代とは違ってもっと政治的な意味合いを持っていた時代。
続きがあるといいんですが、どうやらなさそうな。
2010/08/16(Mon)
『黒髪の月』『将監さまの橋』
ミツルギ
9、15、16日に拍手を頂いた皆様ありがとうございます。
『黒髪の月』(澤田ふじ子/光文社文庫)
イエスとユダのエピソードを下敷きにした表題作は、著名人ではなく一庶民の葛藤を描いているという意味で面白い作品です。「蜜柑庄屋・金十郎」は知多半島でのミカン栽培をてがけた金十郎の生涯を、迫害する村人にも焦点を当てた部分で現代社会の問題にも通ずる観念と人間の浅はかさを描いています。利己ではなくコミュニティひいては国にとって自分に何ができるか、それを考える人の少なさよ。
『将監さまの橋』(澤田ふじ子/光文社文庫)
こちらも短編集。全体的に情緒的な作品が多いです。
金では幸せは買えない、というテーマもありながら、その心境にたどり着くにはある程度の年齢に達しないと到達しないのではないかとも思われます。
ただ、「蓮台の月」の吉野太夫にだけは感情移入出来ませんでした。偏見ではなく、女性特有のドロドロがなさ過ぎて気持ち悪いというのが正直なところ。奇麗すぎてちょっと……。金がなくとも物がなくとも美しい生き方というのは、誰しも望んでいるとは限りません。それは結果であって、要因は決して美しいものではない可能性があります。たとえば、この話では、正妻がありながら、実家が裕福でありながら吉野太夫を愛したばかりに勘当された灰屋紹益。最初から望んで清貧になったわけではなく、原因にはやはり当事者二人はそれでいいとしても、取り巻く人々には別の思惑もあり、世間一般の幸せや経営には不都合な部分があったからです。
自分たちの幸せが、他人の不幸せの上に築かれていることもある。そこに重きを置いてない物語であることは確かなのですが、そういう目線もあるのです。
2010/08/12(Thu)
バーテンダー17巻
ミツルギ
『バーテンダー17巻』(集英社/原作・城アラキ 絵・長友健篩)
「ホテル・バー」編完結の巻にふさわしい内容ばかりでした。
ホテル・カーディナルのバー・イーデンホールの閉店つまり佐々倉溜に独立の話……という縦軸に、今まで登場した人物にまつわるそれぞれの転機、離別の話が重なっていくという作りです。
近年のマンガはコミカライズをプロットの計画のうちにいれてあるので、一巻一巻が非常にまとまりがいいといいますか。昔とは違うな、と。無計画に続けていけるような連載はない、というシビアさの象徴でもあるのかもしれませんが。
『ソムリエール』よりも、登場人物が大人の男性が多いので少し硬派な印象ですが、新人くんの存在がそのへんをソフトにしてくれているので女性でもとっつきやすい。
後半に出てきた「ボッチ・ボール」は私もちょくちょく作って飲んでます。
アマレットとオレンジジュースと炭酸があればOK。アルコールの入った炭酸飲料的な軽さで風呂上がりにいいのです。
2010/08/09(Mon)
冥府神の産声
ミツルギ
『冥府神(アヌビス)の産声』(北森鴻/光文社文庫)
新装版を買ったのを放置していて、未読でした。通勤時に読み始めて三日で読了。
くしくも読み終えた日に「改正臓器移植法」施行後はじめての脳死ドナーの臓器移植のニュースが……。そこには本人の意志は生かされることはない。家族の同意さえあれば。
そこにセンチメンタリズムを覚えるのではないのです。
脳死判定には複雑なプロセスがあり、プロセスにはいわゆる人の感情も含まれます。
たとえ人工呼吸器をつけていても、自力で起き上がれなくても、触れれば温かい人を、心臓も動いている人を「死んだ」と判断することは容易ではないと思います。
感情論はともかく、私が瀕死の患者なら、そんな人の肉体から臓器を奪ってまで生きたいという意志は示しません。また、自分が提供者にもなりません。なりませんが、これも家族が勝手に同意したら己の意志は反映されなくなってしまうのです。臓器が惜しいのでも命が惜しいのでもない、自分の意志がないことが恐ろしい……そう思いませんか。
人は与えられたものの中で精一杯生きれば、それでいいのではないかと思うんですが。根性とか感情とかではなくて。
動物が自分の手足がなくなったからって、ほかの仲間から奪っているのなんて見たことありませんし。
ホラー作家なら、脳死判定を受けているけれども、実は外界のことはすべて聞こえていて意志もあって、ただアウトプット出来ないだけの人間が、”生きたまま”メスで切り裂かれる。
その寸前に呪いの遺伝子を発動させて、移植した患者に未見の病気を起こさせる……なんて書くかもしれませんよ。
そういえば、昔むかし、脳腫瘍の少年が死刑囚の脳を移植されて、目が覚めたら左手の小指がうずいて(死刑囚の小指がなかった)殺し屋になっていたというマンガがあったと思うんですが、子供心にちょっと怖かったものです。
『冥府神〜』は、脳死臨調のリーダー的存在だった教授が何者かに殺害され、事件を調査しはじめた元部下で医療ライターの主人公が犯人と真実を追うというストーリーです。
著者は医療畑とは無関係ですが、練り込まれた構成と医学知識には満足が行くと思います。
やや、甘い部分もありますが、そこは文の巧さで見事にカバーしています。哲学の領域に踏み込んでいるところも秀逸。
大学の内幕なんかも描かれているわけですが、まあ、何なら私も文系版でこういうミステリを書けなくもないかというほど内情はよくわかる。どこの世界も狭いけど、大学はとくに狭いし、いわゆるあの「Z前教授の回診です」的な世界が多かれ少なかれ程度の差はあれ存在するということも。
そこからはみだしたアウトローの主人公・相馬。彼の立場でなければ、踏み込めないところに踏み込むというスタンスは、さすがです。おそらく医局(にしろどこの研究室にしろ)の中にいたら不可触の領域は必ずあって、狭い世界だけにハザードが出回るのも極めて速い。何かあったら即追い出されるし、噂が飛び交うのは目に見えてるので、巨悪を暴こうとかいうのは無理なんですよね。日々、それどころではありませんし。
そういう医療ミステリも多々存在しますが、あくまでファンタジーの領域を出てないと思います。(医学知識やトリックは面白いとかすごい、というのはあっても、社会性やリアル感がイマイチ、という意味での"ファンタジー")
すみません、その辺りは文系の作家の現実主義は辛らつですから。
「世の中がこうだったらいいな」という思いはあっても、目の前を見回したら、理想はすっぱり切り捨ててしまえます。
したがって、この本は好みはあるかもしれませんが、文系作家=職人作家がリアルな社会人としての視点を注いで描いた医療ミステリの傑作だと思います。
2010/08/05(Thu)
新連載にこぎつけました
ミツルギ
『DIO・FIRE!』D.O.M.と称して新シリーズはじめました。
「楽園の天使」。本編から約四年後の設定です。
出世した人とそうでない人、さまざま出て来ますが、より強くなってるのは女性でしょうか(^^;;
以前あった質問に、「D・F!の登場人物の具体的なイメージ(俳優とかにたとえると)は?」というのがありましたが。
主人公はいつもどんな作品でも特にイメージがありません。
たまたま、あ、この人は、と思ったのはアルテミス・サフィール(ミスティ・サファイア)にぴったりなのは若い頃のモニカ・ベルッチではないかと。
主な人物がまだ二人しか出てませんし、何とも言えませんがぼちぼちアップしていきます。
『ダック・コール』(稲見一良/ハヤカワ文庫)
タイトルの話は出て来ませんが、全6話オムニバス、それをつなぐプロローグ、モノローグ、エピローグで構成される狩猟と野鳥をモチーフにした小説集です。
ハードボイルド寄りかな?と思いきや、そういう部分もありますが作者の自然と人間に対する深い愛情を感じるストーリーが印象深いです。非常に映像的。
第三話の「密猟志願」が感動的です。身寄りの少ない少年とリタイアした男との友情、といってしまうとありきたりですが、そこに自然と野鳥をうまくサブキャストとして(むしろ自然のほうが主人公か)配置した見事さ。
些細なことで病んでしまう若い連中は、こういう物語でも読んでみろといいたいです。自然の厳しさは、そして個々の人間に訪れる運命の過酷さは、他人に縋ってなんとかなるものではありません。自分の運命は自分でなんとかする、そんな個々人がたがいにやさしい目で見つめ合う、ときには叱咤し合うのが本当の友情。
稲見氏のこうした作品がこれ以上読めないことが、悲しいです。
2010/08/01(Sun)
ソムリエール14巻とか
ミツルギ
7月24、27、30日に拍手を頂いた皆様ありがとうございます!
>F様
コメントありがとうございます!こちらこそご無沙汰でロムラーで申し訳ありません。いつも新作は読ませて頂いてますが、感想を書けない自分に忸怩たる気持ちです……。
F様のお話は読後にほっこりする気持ちになるんですが、なったのをいいことにぼんやりしてしまいます(ヲイ)。
お互いこの世界で長くなりましたねー(^^)これからも末長く宜しくお願いいたします。
『ソムリエール14巻』集英社
ゲストキャラが次の話につながるというオムニバス式の巻でした。
いつもカナのように凛として、正しいと思うことを無茶なお客様に言えればなあ……と思いますが、現実は厳しいもんです(苦笑)。
2010/07/23(Fri)
久々の更新(^∀^)
ミツルギ
11、14、17、19日に拍手を頂いた皆様ありがとうございます!
連日暑いですが、夏バテにはお気を付けくださいませ。
といいつつ、自分がくたばりそこなってました(爆)。
この時期お得意の胃腸障害で。食あたりかもしれませんが、暴飲暴食のせいかもしれません。
遅くなりましたが、約二か月ぶりの更新が出来ました。とりあえず、ですのでもしかしたらリンク切れとか不都合があるかもしれません。何しろNewパソで慣れないうえに拡張子とかいろんなとこから変わってるのでフォローし切れてるかどうか。
繁忙期に仕事終わってから家事終わってからコソコソやっていたんで遅くなりましたよ……。
大改装も夢見ましたが、ちょっと食指は動きましたがムリムリムリムリムリムリーっ(某マンガ風に)。
『終の雛』連載終わりました。
次なにするかまだ考えてません。気長にお待ちくださると幸甚です。
そして、いみじくもTOPのメニューボードに掲げてしまったように、『DIO・FIRE!D.O.M.』なるシリーズを始めてしまうことに。
前のハードがぶっ壊れた行きがかり上、『D・F!』も新装版にしてみました(つーかこれがいちばんしんどい作業だった。。。)。どうでもいいあとがきとか人物紹介などまとめたりして。
しかし、第一部とかいうあいまいなことを書いて自分、これ第二部とかあるつもり?と一人ツッコミしながら、とりあえず目の前のことを終わらせるっきゃないことに気付くのですが。
それでは、今日はこの辺で。
2010/07/02(Fri)
公事宿事件書留帖シリーズ
ミツルギ
文庫最新刊16巻「千本雨傘」まで読了。
毎回趣向が違いながら一巻平均6、7話で16巻はさすがです。時事問題(振り込め詐欺や老人介護問題、派遣切り、格差社会など)を折り込みながらというのは、なかなか大変な斯業だと思います。
印象に残るのは、いつも文章に見え隠れする作者のお年寄りや子供、弱者に対するやさしい目線です。
個人的には、団子屋で菊太郎の恋人・お信を助ける好々爺の右衛門七(えもしち)(実は過去はわけあり)がいちばん好きですね。公事宿・鯉屋の手代・喜六と丁稚たちのかけあいも面白い。
長く続いてほしいシリーズです。
が、こういう時代小説がベストセラーになるのはいいことである反面、世の中には大声で言えない憤懣が鬱積しているのだと思うと考えものですね。
2010/07/01(Thu)
とりあえずですが、またしても近況報告とか
ミツルギ
皆様、ご訪問頂いて申し訳ありませんが、繁忙期でぐだぐだな感じです。
結局、PCは延命処置をせずていうか出来ず、お亡くなりになる方向で(「長い間ありがとう」と合掌……真に申し訳ない最期でした)、あまりに最近のOA環境にウカツだったため諸々のことを検討しなければならず、新しいのを買う時間さえまだ作れません。買ったとしてもまだ事後処理とかが……。更新等、しばしのお待ちをお願いいたします。
体調も思わしくない状況で、前の仕事をやめる数ヶ月前からここ暫く、滅多にすっきりした記憶がないので、いろいろのことに手をつけるのが億劫ですね。
仕事がらみでツイッターをやりません?という話もありましたが、やる気ナシ。
近頃の社会の「夜型傾向」にもついていけず。
帰宅時に「どうしてこんな夜遅い時間(9時くらい)に人が多いのか?」というのもありますが、どの店もコンビニやファーストフード店など以外では開店が遅いので困ります。遅出のときに時間が中途半端すぎて買い物に行けないし、休みの日も早く起きる私にとっては、開店までのアイドル時間が長過ぎるように思えてしかたないんですが。起きて朝支度して洗濯等終わってから、まだ時間有り余るってどんだけ世間の朝は遅いのか?と不思議でしょうがないんですけども……。
その代わり、夜遅いのは滅法アカンのですが。
何も進まないのもアレなので、時間の合間をみて今後いつになるかわからんけど連載予定の『D・F!』の新シリーズを勝手に企画中です。
準備を怠ってイキオイで見切り発車すると、あとあと自分の首を締めるばかりか、ご訪問くださる皆様にもたいへん申し訳ない結果になってしまうので、こういうことはヒマをみて事前に詰めておくのがベストです。
最初のシリーズの時もそんな感じで、途中紆余曲折や細かいズレはありつつ、まあほぼ(?)予定通りの結末になったので、そこは何にせよ大事なところですよね。
まあ、励ましのお便りを頂戴したり、鋭いご指摘に凹むことはないにせよ、反省点はままありましたので、それも踏まえつつ。
最初の『D・F!』は広範囲でさまざまな民族と人種が登場したのと、宗教がらみがざっくり。ざっくり過ぎて。
突き詰めようとするとあんな長さで終わるわけもないのですが。
今回は、地域を広げずに新たな問題をテーマにしていくつもりです。主要登場人物の人間関係など、未決の要素も多分に残していますし。……あ、もしかして、いちばん重要なのはそこですかね?(^^;
舞台はヴァティカンとその周辺で。
登場人物は誰とはいえませんが。
キリスト教の抱える矛盾点とか、前回言い切れなかった部分も。
第三者的にといいますか、私自身が東洋思想を持つ人間の観点から見ると、というところも含めて。そうなるとどっちかというと、派手な立ち回り、アクションよりもミステリ要素が強いかと。でも、昨今流行のダ○ィンチ・○ードとかは読んでません。
人は総て手に入れることは不可能です。財産、名誉、美貌、頭脳、人脈、子孫、センス……そして命。いずれも人生のさまざまな局面で取捨選択していかねばならないわけです。
一口に「幸せ度」なんて誰かの作った物差しでは計れない、ということも。
それらも『D・F!』の命題といいますか、いかなる小説の一つの命題でもあるような気がするのですが、新作のほうがより現実味を帯びていれば、と思います。
それにしても、最何事も遅々として進まないのがいけませんなあ……。
2010/06/25(Fri)
アンフェアなあとがき
ミツルギ
書店で、「この本ちょっと面白そう」と思って、先に解説やあとがきを見てしまう。
著者が「この作品を世に出すにあたってお世話になった○○さん、編集者の××さん、そして何より支えてくれた最愛の△△に感謝の意をこめて」と末尾に記してあります。
と、
「ごめんなさい。私の買う本じゃない」
と置いて立ち去ってしまいます。
書籍という媒体であり、読者にお金を払って貰って読んでもらうものに、あとがきにおいて特定の人宛に私信めいた言葉を残すのはフェアじゃない、と思うのが私の考えだからです。あくまで私個人は、ですので何も不快に思われない方もおられるでしょうけれども。
読者はあくまで著者、作者にとって顔は見えないけれども、支持者であるのです。本を通して向き合っているのです。そこに「○○さん」の入る余地などあるわけがないと思いますし、まして編集者などはたとえその著者を信奉していようが親しかろうが、「仕事」でもってお金を貰ってやってるわけですよ。「仕事」の対価としての「ありがとう」はあると思いますが、それは紙面に載せるものじゃない。
一言でいえば、
「読者の方を向いてない作家の作品など、たとえ表面的には面白かろうが、読む気がしない」
のです。
この傾向が、近年は専門書にも強いのが辛いところです。
「あのね。この本を出版するにあたって、科学研究費は何処から出てるの?文部科学省のお金はね、税金なんですよ。税金は国民の金なんですよ。特定の人ではなくて、大勢の人の力でこの本は実は成り立っているんですよ?」
と、いい年したおっさん達に諭したくなります。
直接お世話になっていなくても、顔が見えなくても、私たちはいろんな人によって生かされているんですし。
モノカキや研究者というのはワガママで変わり者なのだともいえるでしょうが、それと大勢の人を顧みないというのでは少し次元が違う問題だと思います。人として。
特定の人にだけ目がいってるけど、世の中の人や物事総てに感謝の心、いたわりの気持ち、やさしさを持たない人(という風に私には見えてしまう)が生み出すモノに私はどうしてもお金を払う気が起こりません。何といっても、自分が時間と労力を費やして稼いだお金ですから。そして、それさえも大勢の人から頂いたものなんですからね。
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